PHAETON FRAGRANCE LONGBAR

香料のはなし 魅惑のアルデヒド

香水とは、一般的に複数の香料をアルコールに溶かした状態で、香りの完成度が高い芳香液体のことを言い、10世紀ごろから製造が本格化されたと言われています。
時は経ち、合成香料の発明で量産が可能となった香水は、それまでの貴族の品物から民衆の物へと変化していきました。そして、合成香料によって香水の新時代が訪れたのが、1921年のシャネルNo.5の登場です。これ以降、香水業界は、原料として合成香料が、大いに注目されるようになり、主流となっていきます。

その香料業界を一新させて香料が「アルデヒド」

香りそのものは、脂肪臭とも呼ばれ、脂っこく、鼻に残るもので、決して良い香りと呼べるものではありません。むしろ不快感さえある香りなのです。

そもそも「アルデヒド」とは…
CHO(アルデヒド基)を持つ有機化合物の総称で、高校の化学などでも習う物質。その中の、アセトアルデヒドは、アルコールを分解する際、人間からもでる物質なので、比較的日常生活でも身近な物質でもあります。

それまで、合成香料の出現はあったものの、いい香りを混ぜ合わせれば素晴らしい香りが出来るという既成概念の元、香水が作られてきました。No.5が注目されたのは、良い香りとは言えない「アルデヒド」を高濃度で使用し、ジャスミンやアイリスなど気品ある花々の香りをより一層、引き立てたことにあります。不快臭と呼ばれるものも、他の香料との組み合わせによって、香水に奥行きと温かみを持たせ、魅惑的な香りに仕上げたのです。
また、「アルデヒド」は他の香料を引っ張っていくような性質があったり、人間から出る物質でもあるので、どこか人の体臭を思わせるような官能的な香りとも言えます。
今では、「フローラル・アルデヒド」という香りのジャンルまで生まれるほど、香水業界に革命を起こした香料なのです。

アルデヒド以外にも、香水の原料には、そのままでは不快な臭いのするものが多くあります。
そんな香りも、薄めたり組み合わせることで、芳香となりうるもの。逆に、どんなに素晴らしい香りも、濃度が濃くなれば悪臭になることさえあります。
目に見えなくて、神秘的な香りの世界。数々の香料を組み合わせ、人々の記憶に残る名香を生み出す調香師たちのすごさを感じさせます。

Coco Chanel

Paul Valéry

香水をつけない女に未来はない。

ココ・シャネルの名言として有名ですが、実は、フランスの作家ポール・ヴァレリーの言葉。
シャネルがとても気に入っていた言葉で、いろんな所で使い、ほとんど自分のものとしていました。
そして「良い体臭の人なんていない」「そのままでいいなんて考えは、自分を過大評価していて、図々しい」というのが彼女の意見でした。

暑い日が続くと、特に体臭が気になるという人が増えます。
香水を臭い消しに使用していた時代もありますが、香水は臭い消しではありません。香りを楽しむものです。清潔な肌に使用するのは当然。
しかし、あまり体臭を気にしすぎることはありません。
上手に香りを使い、本来の体の匂いを活かすことで、他の人は違う自分自身の香りを演出することこそ、大人の嗜みというものです。

調香師のように、一から素晴らしい香りを作ることは難しくても、自分の肌の上で魅惑的な香りを生み出すことは可能なこと。
この夏の、必須課題になりそうです。

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