PHAETON FRAGRANCE LONGBAR

グラースからの贈り物「MARIEJEANNE」

昔々、プロヴァンスの空の下に、魔法の額縁で囲まれた不思議な町があって、
花をたくさん持った一人の妖精が杖を一振りすると、あたり一面が花に覆われた。
・・・オレンジフラワー、バラ、スミレ、チュベローズ、ミモザ、ジャスミン・・・。
かわいい花々は、その香りを風に乗せ、風車を越えて、周りの村々に送った。
蝉の多い街グラース、そしてアルプス山岳大隊駐屯地のグラース。
兵隊たちが鳴らす大きなラッパの音にも、この楽園は香りの都という響きがこもっていた。

写真集「GRASSE」より

まるで妖精が魔法をかけたかのように、美しい風景が広がる南フランスの都市「グラース」。
映画祭で有名なカンヌから17キロほど離れた丘陵にひっそりとたたずむ、人口5万人にも満たない小さな街は、「香りの聖地」として多くの調香師が集う街なのです。

地中海性の温暖な気候と、アルプス南端の丘陵地帯からの豊富な湧水により、昔から多くの種類の植物が育まれてきた土地に、香水産業が初めて栄えたのは18世紀終わり頃のこと。当時主要産業だった革なめしの生産が行われるなか、香水を染み込ませた革手袋が開発され、それが流行したことがきっかけだと言われています。

皮産業が衰退した後も、香料産業は勢いは止まりませんでした。ピーク時は70社もの香料会社があり、住民のほとんどが香料生産に関わる職に従事していたようです。
その後、戦争や合成香料の台頭、また近年では企業の吸収・合併などでその多くが見る影も無くなってしまったわけですが、恵まれた環境と天然香料の高度な処理技術を持つグラースの専門家たちは、現在も歩みを止めず、その功績は国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されるほどとなりました。

そんな中、ピーク時の1800年代から現在も存続している香料会社の一つがファミリー企業であるRobertet(ロベルテ)社。
そのロベルテ社の5代目であるジョルジュ・モーベルが、2020年にスタートした フレグランスブランドがMARIEJEANNE(マリージャンヌ)です。


ジョルジュ・モーベル

ロベルテ社の5代目として生を受けたジョルジュにとって、幼い頃から香水の世界はもちろん、花の扱いや香りの構成に至るまで身近な存在でした。
14歳の時に、パリのシャネルの香水を制作するラボでのインターンシップで自身初の香水を作成。
様々な香料から物語を作り出すその魔法のような工程に魅了されていき、16歳からはロベルテで様々な部署での経験を積み、現在に至ります。
マリージャンヌは、グラースとその街に住む人々に大変愛着を持っていたジョルジュの祖母の名前。
それは、フランスの優雅さ、技術、そして祖母の優しさや知恵を思い起こさせる香りでありたいと願っています。


香料会社がバックボーンにあるからこその、香料の質の高さ。くもりのない香りは、香った瞬間に「香りの聖地」へとトリップさせてくれることでしょう。
グラースだけではなく、世界中の厳選された天然香料で紡がれる作品は、シンプルなようで味わい深く、意外な組み合わせが癖になります。また、素材本来の魅力を大切にして調香された軽やかで上質な香りは、ファーストフレグランスにも最適です。

そんな、マリージャンヌは、制作過程での廃棄物やCO2排出量を減らし、使用する水の総量の把握など、天然資源を守るための環境配慮を欠かしません。
また、香水が主役であることから考えられたシンプルなボトルや、香水の原料を想起させ、再利用も可能な木箱の使用など。天然香料の恩恵を、皆に届け、そしてその恵まれた環境を守っていく誠実な姿勢もブランドの魅力なのです。

その昔、私たちの知らないところで届けられていたグラースの香りを知っていますか?

時は170年前の江戸幕末。
1853年7月、アメリカ合衆国のマシュー・ペリー提督率いる艦船が来航した事件。
日本が開国、そして明治へと歴史が変するきっかけとなった「黒船来航」の際に、ペリーは「アメリカ産の見本」となる手土産を幕府要人それぞれに贈ったとされています。
小型蒸気機関車、モールス信号機などのアメリカ自慢の品々の中に、「香水セット」という記述が。
当時のアメリカには、香水会社はなく「アメリカ産の見本」となるべき香水は皆無。ペリーが贈ったのは大統領の意向からは外れてフランスの香水だったのです。
「ペリー日本遠征随行記」の情報から読み取るに、ペリーは様々な香水の小瓶を会議出席者の数に合わせて、艦上で見繕って組み合わせたのでしょう。
合成香料を用いた香水の登場は1882年が最初であることから、全て天然香料の香水だったということははっきりしています。
そして、当時からグラースは香料のメッカであったことも踏まえると、ペリーから届けられたのはグラースの香りであったに違いありません。

日本では、砲艦外交で開国を迫った強面の人物として語られることの多いペリー。
しかし、漂流民の保護や自由貿易のもたらす価値、はたまた女性の社会進出など、近代化につながる様々な信念を日本に伝えていた事は、様々な資料で明らかです。また、幕府の要人を祭典に招待した際も、夫婦同伴を要請したよう。しかし、その要請はチョンマゲの役人たちに軽くあしらわれました。もしこの時に夫婦同伴が受け入れられていたなら、ご夫人たちは、ペリーの贈った香水をつけて祭典に現れたことでしょう。

こういった見えざる信念を香水によって伝えたかったのか、はたまた、ペリーが愛香家だっただけなのか、今となってはわかりませんが、幕末の混沌とした中でも、現代の私たちと同じようにグラースからの贈り物を受け取った人々がいたという事。その人々は、その贈り物をどう感じたのでしょうか?

マリージャンヌの創設者ジョルジュ・モーベルは、グラースのアトリエから香りを届けることによって、愛、幸福、創造性、そしてプロヴァンスの太陽の光のパワーが私たちに届くことを、心から願っています。
そして私たちが、自然に囲まれた特別な惑星に住んでいて、未来の世代のためにもその自然を守っていかなければならないことを製品を通じて、私たちに伝えてくれているのです。

グラースからの美しい贈り物を受け取る際、ぜひそんな思いに耳を傾けてみてください。

参考資料
・香料商が語る東西香りの秘話 株式会社 山と渓谷社 相良嘉美・著

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ピュアな赤ちゃんを思い起こさせるクリーンなシャワーは、大人さえも優しさで包み込んでくれます。
ロベルテ社のファミリーネームが付けられたコロンのシリーズ。
それは、ジョルジュの子供の頃の幸せな思い出を彷彿させる香りなのです。

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