PHAETON FRAGRANCE LONGBAR

香料のはなし ベルガモットの秘密




“柑橘系”と聞いてあなたは何を思い浮かべますか?
レモン、オレンジ、グレープフルーツ、、、etc
ベルガモットの名が上がったあなたは、きっと香り通なのでしょう。

ベルガモットは、一般的に食用としての流通がないため、どんな柑橘なのか知らない人も少なくないと思います。95%以上が香料素材としての需要で成り立っていて、紅茶のアールグレイの香り付けに使われているというとイメージしやすいのかもしれません。苦手な人がいない万人受けの香りとも言われ、香水やアロマテラピーの植物香料としては、欠かすことのできない素材なのです。


Sebastian StabingerCC BY 3.0

アールグレイ: Earl Grey)とは、ベルガモットで柑橘系の香りをつけた紅茶で、フレーバーティーの一種。原料は中国茶のキーマン茶(祁門茶)が使われることが多いが、茶葉のブレンドは特に規定がないため、セイロン茶や、中国茶とセイロン茶のブレンド、稀にダージリンなども用いられる[1]。”Earl Grey” とは「グレイ伯爵」の意であり、1830年代のイギリス首相、第二代グレイ伯チャールズ・グレイに由来すると言われている。

ライムとレモン(ビターオレンジの説もあり)の交配種とされるベルガモット。 ライムのシャープさとレモンの明るさを受け継ぎ、気品が感じられる香りです。果実は球形から洋ナシを縦につぶしたような形で、直径8~10cm。 精油生産だけのために栽培される特殊な柑橘類で、果実には非常に強い苦味があり、生食には向かないとされます。木々は高さ約3~5m。開花期は4~5月。オレンジよりもやや小ぶりで丸みをおびた白い花をつけます。主産国はイタリア。特にイタリア半島の先端、カラブリア地方で全体の90%が作られています。

果実をつかんだ時、手に残る香りがとても良いことに気づき、これがきっかけで香料生産が始まったとされ、古くから香粧品に使われています。清潔感があり上品な香りは、多くの人を惹きつけ、現在でも香水に欠かせない香料として、フレグランスロングバーで扱っている香水の多くにも使用されています。

なぜベルガモットの香りはこんなにも、愛されているのか?

今回は、その秘密を様々な角度から見ていきたいと思います。

その1|香りの構造

香りの質や特徴を知るためには、その化学構造を知ることが重要とされています。香りに関するすべての情報は化学構造に秘められているのです。

柑橘系の精油の主成分となるのがd-リモネンです。シトラス系の代表的な香り分子で、フレッシュで甘みのあるシトラスの香りを持ちます。しかし、ベルガモットはそれと大きく異なり主成分は、リナロールと酢酸リナリル。リナロールは、イランイランやジャスミン、ローズなどの花々に含まれる香り分子で、スズランのような穏やかでフローラルな印象の香り。また、酢酸リナリルは、ラベンダーに多く含まれる香り分子で、天然の抗鬱薬とも言われています。どちらもフローラル系に分類される香り分子なのです。

爽やかさの中にも華やかさがあり上品なベルガモットの香り。フローラル調の香水のトップノートにもよく使われています。香りの構造的に見ても、フローラルの要素が多く含まれている分、相性が良いことがわかりますね。



その2|香りの効能

ベルガモットの精油の香りには、エネルギーの循環を促す作用があります。抑圧されてしまった感情、イライラや欲求不満の感情に、自発性と楽観性を与え、エネルギーの流れをスムーズにしてくれるのです。また万能薬とも言われるラベンダーに多く含まれる成分によって、リラックス効果だけでなく鬱症状にもとても有効です。

香りを嗅ぐと、気分をスッキリさせ、気持ちを明るく前向きにしてくれるベルガモット。軽すぎない爽やかさなので、元気を出したい朝に嗅ぐのも良し、疲れを癒したい夜に嗅ぐのも良しの香りなのです。



その3|抽出方法

ベルガモットの香り抽出方法は、圧搾法がメインです。圧搾法は、香り成分を取り出す最も原始的かつ単純な方法とされ、昔は手作業で果皮を絞っていました。現在は、ローラーや遠心分離機などの機械を使います。工場の設備は時の経過とともに進化する中でも、果皮からの抽出原理は今も変わっていません。

そして、圧搾法は熱による影響を受けないため、デリケートな成分を損なうことなく新鮮な香り成分を取り出すことができるという利点があります。柑橘系の中でも繊細なベルガモット。圧搾法だからこそ質を落とさず、そのフレッシュな香りや効能を堪能できるのです。そして、採油率は果実の0.5%と少なく世界一高価な柑橘とも言われています。




「余の辞書に不可能という文字はない」


という言葉を残したナポレオン。その功績は言うまでもありません。連日馬上で指揮を取りフランス軍を勝利に導いたナポレオンは、香水好きとしても知られ、一説ではオーデコロンを1ヶ月に60本も使っていたと言われるほど。そんな彼が、好んだ香りが爽やかなベルガモットの香りなのです。

David – Napoleon|public domain

ベルガモットの香りは、圧搾法で抽出されてるから本来の成分を損なうことはないし、エネルギーの流れをスムーズにして元気が出る。そして、構造上いろんな香りと合わせやすいんだ。。。

とナポレオンが考えていたわけではないと思いますが、本能的にベルガモットの香りが自分の緊張や疲労を和らげてくれると確信していたのではないでしょうか。殺伐とした戦場での重大な意思決定のとき、ベルガモットの香りがいつも側にあったに違いありません。

そんなナポレオンの時代から香水の原料として人気が出たベルガモット。甘さと苦さ、爽やかさを合わせ持つフレッシュな香りは、構造的にも効能的にも、またその成分を壊すことなく取り出せる抽出方法的にも、とても優れた香料です。そして、デリケートな性質もあり、繊細で儚く消えていくという一面も持っています。だからこそ強く香りすぎることなく、香水や化粧品に上品さを与え万人に愛される香りとなったのでしょう。

トップノートで存在感を出すものの儚く消え、メインの香りを際立たせてくれる香りは、料理で言うと前菜のような存在。香水をフルコースで楽しむためにも、前菜から誠心誠意向き合い、じっくり味わってみてはいかがでしょうか。

香りは、本能で感じるものです。

しかし、今回はあえて回りくどく、いろんな角度から一つの香料を見てみました。

香りの嗜み方の一つとして、素材の背景を思い描いてみる。

それが、あなたの「香りの世界」を少しでも広げるきっかけになれば幸いです。

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