teteria SUSUMU ONISHI


 

 

Interview  teteria SUSUMU ONISHI

 

2017. 10/28sat・29sun
TEA WORKSHOP &DESSERT PARTY Vol.3
美味しい紅茶とお菓子の時間

 

 

 

Q.

まずは、大西さんの自己紹介をお願い致します。

A.

自己紹介ですか?

Q.

はい。定型の紹介文だけでは見えない部分、つまり実際にお会いした時の印象が、自己紹介していただくことで大西さんのお人柄がもっと伝わるのではないかと思いまして。

A.

なるほど、わかりました。

テテリアの大西です。紅茶の茶葉の販売と、各種イベント・紅茶教室などをやっています。1976年生まれ。41歳です。(2017年10月27日現在)一番最初に紅茶に興味を持ったのは、イギリスの探偵小説を読んでいて、そこから始まりました。それが中学生ぐらいの時で、それから高校生になって喫茶店に行くようになり、そこで働くお姉さんのことが好きになっちゃって、毎週通うようになって(笑)。コーヒーが飲めなかったので、紅茶を飲む様になった、というのが紅茶との出会いです。

と、こんな感じですかね。


Q.

ありがとうございます。
喫茶店のエピソードも掲載してよろしいでしょうか?笑

A.

どうぞどうぞ、
有名なエピソードなので。笑

 

 

 

 

紅茶の一番の魅力

Q.

ありがとうございます。
それでは、ひとつめの質問になります。
「紅茶の一番の魅力」はなんでしょうか?

A.

「色」ですね。赤い色は、紅茶独特なんです。きれいなクリアな赤い色を見るたびに本当にハッとしますね。それが生活の中にあるというのが、すごく刺激になります。

Q.

それはやはり、
茶葉によって全然表情が
違うのでしょうか。

A.

そうです。淡いオレンジから濃いオレンジ、真紅、黒っぽい感じの茶色のグラデーションまでズラッととあるんですけど、それもお好みですよね。僕はこう赤い綺麗な色がパーンとカップの中に見えると、グッときますね。

Q.

いつも大西さんのinstagramに
投稿されている紅茶のお写真は、
本当に宝石のように色鮮やかですね。

A.

なるべく綺麗に 見えるようにしていますから。笑

Q.

昨年のイベント紹介の
ポストカードに使わせていただいた
紅茶のお写真も本当に
赤とピンクが美しかったです。

A.

そうなんですよ〜。「紅茶を見て欲しい」というのがあるので、なにかその「紅茶とそうでないものの境界線みたいなところ」を写真に関してはですが、そういうのを意識してます。

Q.

これが仮にコーヒーだと
黒っぽいカラーだけになりますね。

A.

そうですね、黒と、
あとラテアートですか。
ラテアートはすごくいいですね。

Q.

ラテアートが
お好きなんでしょうか?

A.

はじめは何とも思ってなかったんですけど、
ほらあれは「コーヒーであることのサイン」 じゃないですか。

 

テーブルの上にカップが1つ2つあって、その上にラテアートが載っていたら、それは「コーヒーのシーン」なんです。何の説明もいらない。それはすごいことだったな、と思って。それ以外の飲み物ってそういうことやらないじゃないですか?抹茶とかまあ、派生しているものはありますが。ああいうのが、なぜアートなのかな、と最初は思っていたんですけど、逆の意味でいくと、サインとして確立させたなと。


Q.

描いてある絵ではなく、
「ラテアートのある風景」
ということでしょうか。

A.

そう、あれが置いてあるシーンが
「コーヒーのシーン」なんです。無言でも。

紅茶にはそういうのがないので、
悔しい思いをしました。

あれ、何の話してたんでしたっけ?


Q.

紅茶の魅力の話ですね。笑

A.

そうでした。
紅茶の色ですね〜。笑。

Q.

大西さんの紅茶の中にも、カップの上にモコモコした泡がのせられたものがありますが、あれはそういう意味で対抗して作られたのででしょうか?

A.

・・と、いうわけでもないんですよ。モコモコのものは、泡とか、ふわっとしたものは濃い味の緩衝材になるんですよ。なので、紅茶の、ミルクティーとかだと強い味になるんですけど、その味の一歩前にふわっとした何かこう緩衝材が入ってからお茶が入る。そういう(紅茶の)構成として使っています。なので、ふわっとした味の下には、強い紅茶があり、それが合わさって滑らかになる設計になっているんですよ。

Q.

紅茶にも設計があるんですね。

A.

そう、設計というか構成があるんですよ。
どういう順序で入っていくか、
それでまったく味の感じが違うので。

Q.

ということは、
同じ素材の組み合わせでも、
構成を変更すれば・・

A.

そう、また違うんです。牛乳の多さとか、どの素材ががメインかってことにもよるんですが、牛乳を最後の印象に残すのと、紅茶を最後に残すのと、というのはありますね。

Q.

単純に入れる素材の
順番を変えたりなどでも 変わるのでしょうか?

A.

そうですね、
あと、素材の量の関係も。

まあとにかく、
色を見て欲しいですね。
紅茶に関しては。


Q.

色を楽しめる飲み物
というのはあまりないですね。
それこそ、紅茶でしか
見られない色がたくさんあります。

A.

紅茶が、赤色に関してはやっぱり秀でている感じがしますね。琥珀色から赤色まで。いろいろ揃ってますね。ワークショップではぜひ、その赤色を楽しんでください。

紅茶初心者へ一言アドバイスを

Q.

紅茶の絵本を拝読させていただきました。とても楽しくてわかりやすく、紅茶を始める方にとってのバイブルになりそうです。これから紅茶を始める方に向けて一言アドバイスがあればお願いします。

A.

いい紅茶、質のいい紅茶を飲んで欲しいですね。始めるにしても。何にしても。それはもう慣れてるとか慣れてないとか素人とか玄人とか関係なくて。何にしろ良いと言われているものは綺麗な味がするので。そういうものから、良い茶葉から始めて欲しいですね。

Q.

それは美味しい紅茶屋さんに行った方が良いのでしょうか。茶葉を選んで自分で淹れる前に、体験しに行った方が良いでしょうか?

A.

それもそうですよね。
そうなのかなー。

Q.

自分で淹れると、
やっぱり上手に淹れられない
可能性もありますし。

A.

専門で取り扱ってるところに
行ってもらって、
一度楽しんでもらうと
いいかもしれませんね。

Q.

大西さんのように
完全に紅茶専門でやってらっしゃる
方はあまり多くないのでしょうか?

A.

そうですね、でも大体、県や市に1つぐらいは紅茶専門店があるので。ただ、そのお店によって、趣味がわりとカントリーな感じとか、そういうところも多いので、自分の行きたいお店と趣味が合うかどうか、というのは難しいところかもしれませんね。そういう良いお店との出会いがあるといいですけどね。紅茶との出会いがどこかにあると良いですね。

Q.

大西さんが常に
「ここで紅茶を淹れています」
というスポットはあるのでしょうか?

A.

それは特になくて。お店もないので、アトリエがあるだけで。お店さんに茶葉だけを卸しているっていう感じですかね。イベントとかでは淹れにいきますけど。

Q.

そういう意味では、
イベントで大西さんに
淹れていただけるというのは
かなり貴重な体験ですね。

A.

いや〜、もうこちらの方が貴重な時間として捉えています。直接人と会って話をしながら淹れるのが好きなので。そういう時間ってほんとないじゃないですか。いつも一人で仕事をしているので。だからもう、すごい楽しみでもあり、緊張感もあるっていう。やっぱり楽しいですね。飲んでもらうっていうことが。

Q.

元々はデモンストレーションを
行うことが前提で
紅茶教室を始められたんでしょうか?

A.

ちょっと違いますけど、ライブみたいなもので、実際淹れるところを見てもらうことが一番大事で、あんなに簡単でいいんだとか、そこが大事なんだとか、何かこうヒントになるかもしれない。僕も紅茶を淹れるのが上手な人の手を見て覚えたので、そういう体感をするっていうか、目の前で見るっていうことにヒントがいっぱいありますね。

Q.

目で覚えた方が
良いということですね。

A.

そうそう、そうなんですよ。あとはもう淹れた回数だけ。あの宮本武蔵が、3年と10年とっていうのがあって、剣の素振りを千日やる、万日やる、それを通して上達していく、みたいなものがあるんですよ。そのためには3年ぐらいかかるっていうので、毎日日々続けることで形が出来ていくっていう。

紅茶で言えば毎日紅茶を、3年とは言いませんが、1ヶ月2ヶ月、毎日毎朝紅茶を素振りのように淹れ続けて飲んでいくと、100回淹れた後と、1回目とでは全然違う紅茶になっているので。それを地道に取りに行くというか「迎えに行く」って言ってるんですけど。「味を迎えに行く」と美味しさを感じますね。


Q.

「味を迎えに行く」

素敵な言葉ですね。


A.

ええ、何しろね、(毎日淹れないと)やってこないですからね。探しに行かないと無いし、普通に生活していて美味しい紅茶が飛び込んでくるっていうこともまず無いですから。やっぱり欲しいものを、それを欲することがあれば「迎えに行く」と、いつも思ってますね。それで、やってみる。何度も何度もやってみると。美味いとか不味いとか関係なく、回数をやっていくといいと思います。

Q.

ありがとうございます。

スモークシナモンティーの誕生秘話

Q.

スモークの紅茶の
誕生秘話があるとお聞きしたのですが、
どの様にして誕生したのでしょうか?

A.

そう、なんて言うんですかね。スモークティーに至るまでは、2年くらい前に、こちら(PHAETON)に来た時にですね、皆さんがシガーとかパイプを嗜んていたんですよね。それで、その風景がすごく良かった。格好いいなと。煙の揺れる感じとか、その男っぽさとか。女の人も好きな人いると思うんですけど、わりとこう男っぽさってあるじゃないですか。その煙の揺れる不安定なふわっとした感じとか風になびいてしまう不確かさみたいな、そういうのが煙から感じるわけです。

それで、弱さであり、強さであり、みたいなものが煙にある。そういう風景がまず良かった。いいなと思ったっていうのと、何か紅茶と楽しめないか、というのがありました。で、2、3年前に来てくださったお客様が、こう、みなさん格好いいじゃないですか。洒落ていて。洋服とか、表情も。こういうイベントに参加してくださる方の立ち振る舞いとか、すごく格好良かったんですよね。紅茶ってどっちかっていうと女性の飲みもの的なイメージがあるじゃないですか。


Q.

そうですね。
ステレオタイプなイメージがあります。

A.

れで、その時はそういう格好いい人に「飲んでもらっているな」っていう感じがしたんですよ。「飲んでもらっちゃってる」な、と。いつか、こういう格好いい感じで過ごしている方に、似合うような、寄り添うような紅茶が出せたらいいなっていうのを思っていて。そこに、その辺がくっついてこの煙の雰囲気っていうのが、皆さんに合っていたし、ちょっと面白いし、作っても楽しいし。またそんなのをね、家でやってもらえたら、楽しいなと。そんなところから始まりました。

それで、このシナモンというのがすごく甘いんですよ。その甘さと紅茶の味との合わさったもの。「スモークシナモンティー」って呼んでるんですけど。紅茶って、葉そのものの香味、味わいのものと、フレーバーティーっていう香料をつけたがお茶があるんです。その2種類があって、僕はそのままの味の方をずっと飲んでいて、香り付けをした方は、あんまり必要としていなかったんです。

どうせ飲むんだったらそのままの香りがある方が好きなんですよ。で、そうやってきたんですけども、このスモーキーな仕上がりのお茶っていうのが、古い中国の紅茶があるんですけど、その紅茶っていうのは乾燥させるときに松の木で燻すんですよ。その煙が出来上がった茶葉にまわって、その葉っぱに、松の木の燻製の香りが入るんです。「ラプサン・スーチョン」って言うんですけど。ちょっと正露丸みたいな香りのするお茶です。

まあ、そこを目指していたわけでは無いんですけれど、その香料のお茶に対するアンサーとして、その、木を燃やして煙を出してお茶と一緒に閉じ込めて楽しむ。そういうお茶が合致したというか。古いフレーバーティーにつながっていくっていう。ちょっと意味わかんないかもしれないですけど。笑

 

引用:現代紅茶用語辞典

正山小種|ラプサン スーチョン|LAPSANG SOUCHONG
中国福建省崇安で生産された正山小種紅茶。形状外観は粗いが、カップ水色は紅色で、こく味があり、松の煙香が強い特殊な紅茶。1840年のアヘン戦争の直後、中国社会は混乱し、崇安県の銘茶「武夷山の岩茶」の生産が激減したため、「偽岩茶」が出回った。やがてイギリス市場で充分に発酵させた紅茶の需要が集中したため、揉捻、発酵、乾燥を終えたあとで、さらに茶葉を竹製の篩のなかに入れ、そのまま木の桟につるして、その下で松柏の木を燃やして燻煙し、熱で再乾燥(中国独自の熱発酵)させた小種紅茶が、武夷岩茶の変形として誕生した。

 


Q.

いえ、すごいことです。

A.

結果そうなっちゃったんです。素材を求めていたら、そっちに近くなっちゃったんです。一番最初のところに近くなっちゃったんです。

Q.

ある意味、
紅茶が誕生して間も無い頃の
一番プレーンな紅茶に
辿りついてしまったわけですね。

A.

そうかもしれない、というところがありますね。それで、この煙の景色っていうのと、皆さんの格好よさみたいなものが、割と近い所にあると思っていて。今煙って生活から離れていってるじゃないですか。

Q.

そうですね。

A.

家の中ではもうあんまりないですし、BBQでもしないとね、火も使わないし。でもね、スモークの、そういう煙の魅力ってあると思うんですよ。なんかもっとこう、原始的な。

Q.

感覚に訴えるようなもの、でしょうか。

A.

そうそう、「おぉ〜」みたいな。やっぱり好きだし、焼いたものとかスモークサーモンとかもそうですし。ちょっと煙のまわった肉とかも美味しいですよね。タバコもやっぱり、葉巻も。煙がまわるっていうものに対して僕たちは、どこかで、根源的な所で魅力を感じているはずなんです。でも生活からはどんどん遠ざかっているので、そこに「この紅茶」です。

Q.

一石を投じられた感じがします。

A.

とにかく楽しい。
グラスの中でゆらめく
煙を見ているのは、
本当にいいですね。

Q.

本当に美しいですね。
初めて拝見したときは衝撃でした。

A.

ああいう景色、
いいですよね。

Q.

煙と一緒になることで、
その一瞬しか見られない景色が、
色以外にもまた生まれたわけですね。

A.

そうですね!そうそうそう。そういうことです。「見て欲しい」ってところが、あるんですよね。注目して欲しいっていうとあれなんですけど。やっぱり見せたいですよね。そういう部分では、煙を使って、楽しんでみて欲しいですね。

Q.

誕生のルーツがPHAETONにあった、というのは嬉しいですね。飲食のものでは味の話に集中しがちですが、その「見せたい」ということが・・

A.

そうそう。あるんですよ。「見せたい」んです。色とか。白い器が好きなんですけど、紅茶の赤が綺麗にうつるんですよ。そのための白。

Q.

instagramなどで、「この器にはこの紅茶がいい」と書いていらっしゃることがありますが、やっぱり器を買われる時にはそういう想像を膨らませて選んでらっしゃるんでしょうか。

A.

そうですね。やっぱりカップに関しては紅茶が映えることが第一で。紅茶がメインで。カップがあることでそれが引き立つというか。そういうカップが大好きですね。

Q.

そこはやはり
インスピレーションでしょうか。
「このメーカーのこのカップがいい」
ということではなく。

A.

あ、単純にあるんですよ。そういう法則が。縦長のカップだとどす黒く見えちゃうんです。開いているカップだと、光が入るので、赤く見えるんです。なので、こういう感じの平たい口の開いたティーカップなんです。脈々と美しい姿を見せてくれているヨーロッパの、いわゆるティーカップとか、ああいうのは本当に綺麗に見えるんですけど、いかんせん僕たちの生活の中にそれがしっくりこないんですよね。そこだけ英国風というか、それが好きな人はいんですけど、そこだけ急に柄物の食器っていうのはちょっとあんまり、自分にはのれないところがあって。

Q.

そういう意味での
「もっと生活に寄り添った紅茶」 があってもいい ということなんですね。

A.

そうですそうです。 僕たちの生活に合ってる 紅茶を飲みたいですよね。

Q.

「紅茶といえばこんなイメージ」 というものが出来上がっていますしね。

A.

もちろんそれも良くて、美味しさもあるし、すごく理にかなってる所があって。あの「ご婦人のティーセット」みたいなものがあって、実際保温力とか、色の映え方とかも、本当に計算されているので完璧に出来上がっているんですけど、その完璧な世界に自分は入れなかったので。

じゃあもっと違う見せ方とか、自分たちの生活に合うような紅茶の形っていうのをやっぱりこう発見していかないとダメですよね。なのでなるべく、そうなるようにやってます。


Q.

自分たちに必要なものが
無いから作ったわけですね。

A.

そうなんです。たまたま自分がそこ入らなかったので、自分なりの紅茶を自由に楽しんでいる、って感じですかね。でもまだ自分だけが楽しんでいる感じなので、なるべくこう皆さんと一緒に、飲んでもらいたいですよね。なんか男の人が飲んでいてもサマになるような。女性が飲んでいてサマになるようなものって沢山あるんですけど、やっぱり一緒に楽しんで欲しいので。一緒に飲めるような。美味しい紅茶を楽しみたいですよね。

Q.

大西さんがその世界を
こうして作ってくださったので、
非常に飛び込みやすくなっています。

A.

本当ですか?
ありがとうございます。

Q.

自分で淹れると失敗して
渋くなってしまうこともありますが、
紅茶を自分で楽しめることが
嬉しいですよね。

A.

「渋い」っていうのもいいんですよ。「渋い」って言葉があるじゃないですか。その渋さの構造っていうのが、あってですね。甘いっていうのは、いい悪いの話じゃないですよ?媚びさせるってことなんですよね。渋いっていうのは真逆の、独りで立つってことなんですよ。そういうなんか昔の言葉でね、今はあんまり言わないかもしれないけど、「あの人すごい渋い」って言いますよね。そういう人って甘えが無いじゃないですか。

Q.

自分に厳しい人、
といいますか。

A.

そうそう。そういう言葉なんですよ。もともとは。「その「渋み」っていうのは、甘さの反対にあるようなものを持った飲み物なんです。紅茶っていうのは。これは「苦い」とも違うし、「酸っぱい」とも違う。「渋み」っていうのはそのそういう雰囲気をまとった飲み物なんです。なのでやっぱり昔ながらの「渋いなあ」という感じの人にも紅茶を楽しんでもらいたいですよね。味も寄り添っていくものだと思うので。

Q.

「渋い」楽しみ方もある、
ということですね。

A.

そうなんです。甘いものももちろん美味しいですよ。それでそれを知りつつ、先に甘さを経験した後の渋みっていうのもあるので、そこを楽しみたいですよね。僕も甘いものとか、甘い飲み物が大好きだった時もあるんですけど、今も作りますけど、そうじゃない飲み物の良さ、その渋さっていうのは、飲んだあとに爽快感を生むので、すっきりするじゃないですか。そこが魅力の一つですよね。飲み終わったあとに、すっきり。

紅茶に季節はありますか?

A.

そうですね、単純に採れる季節が違う、ということですね。春摘みと夏摘みと秋摘みと冬摘み、というのがあります。冬は少ないですけどね。その採れる時期で、葉っぱの生育が違うので、作ってる所の気候で、温度が高い低いで、発酵が進む進まないとか、そういう色んな要素があってその季節ごとの紅茶っていうのはあります。

摘む時期によって味は全然違います。芳香も違って、これが同じ茶園で作ったお茶なんだっていうくらい違うんです。


Q.

同じ茶葉でそういう
違いが出るんでしょうか?

A.

そうなんです。時期で変わるんです。
春のお茶が出たら摘みますよね。
しばらくするとそこに、
2回目の葉っぱがのびてくるんですよ。

Q.

パッケージに書いてある
ファーストとかセカンドとかいうのが、
その時期を指しているわけですね。

A.

そういうことです。だから、ファーストフラッシュが春摘み、セカンドフラッシュが夏摘みです。それからまた時期が経つと新しい葉が生えてきて、それを摘む、という感じで。日本茶でいう、一番茶、二番茶のような感じですね。それで、味違いますし、それともまた関係なくその季節で飲みたい紅茶も変わってきますし。5月ぐらいから冷たいお茶が美味しくなってきますよね。夏は本当にほぼアイスティー。熱いが好きなひとはホットで飲むんですけど、そこのミントとかね。入れてちょっと清涼感を高めたりとか。そういう風にして季節ごとに変わってきますね。

9月10月ぐらいになるとあったかいお茶が飲みたいのでホットに変わって、もう少し秋冬になってくると、今度はミルクたっぷり入って、やわらかな飲み物でぬくぬくしながら飲むっていう感じに変わってきます。秋になると焼き菓子とかも美味しくなってくるので、そうすると、人によってはあったかいミルクティーで一緒に食べたいとか、あったかいストレートで飲みたいとか、そんな感じで、そういう違いもあります。

なので、やっぱり紅茶に季節はあって、季節で「飲みたいものが変わる」ので、飲みたい気持ちに合わせて色々淹れていくと楽しいと思います。


Q.

なるほど。そうすると、まずはteteriaで大西さんが販売開始される紅茶を順に淹れていけば、1年を通して季節の旬の紅茶が楽しめるわけですね。あとは自分の気持ちにあった紅茶を飲む、という形で。

A.

そういう感じにはなっていますね。あとは、「季節を越える」っていう楽しみもあります。真冬に青々とした春摘みの茶葉を飲むと、やっぱり春のことを思い出すんですよね。記憶装置なんです。一つの。

その緑色の、春摘みって緑色っぽいんですけど、それがポットの中でふわっと広がっていくと、その青々しさから春のことを思い出して、春の思い出が蘇ったり。そういうものですね。夏でも春でも、お茶って生の葉っぱを乾燥させてもんだりして加工して乾燥させるんですけど、そうするとそこで葉っぱの時間が止まるわけじゃ無いですか。


Q.

閉じ込められるわけですね。

A.

閉じ込められます。そこに、シーズンが変わって、自分の手元に届いて、お湯を注ぐと、また葉っぱに水がもどってふわっと開くんですよ。そこはやっぱり春のものは春の味が、そこでまた取り戻すというか、そういう楽しみもありますよね。

Q.

大西さんのお話は
色まで思い浮かぶようです。
雪解けで芽ぶくイメージですね。

A.

そうなんです。全く微動だにしていなかった、冬眠していたお茶の木が、やっぱり力を出してくるんですよ。春って寒いので、ちょっとしか(葉が)出ないんですよ。だから収量が少なくて、そのちょっと出たのを摘むから春は高級品なんです。元々の量が少ないから。

Q.

納得ですね。紅茶の味と香りが 「記憶装置」というのも、
気持ちを切り替えたい時に役立ちそうですね。

A.

だからあれですよ、好きな女の子がいたらですね、ある紅茶を淹れるじゃないですか。で、「また会いたいな」とか思う時に、その紅茶を淹れると、その時の思い出とかがですね、葉っぱと一緒に開いてくるんですよ。笑

Q.


A.

そういう、
想起させる、思わせる、
そういう装置でもありますね。

Q.

PHAETONの店内では、フレグランスなどの香りがするのですが、再来店された際にまた香りを感じた時に、前回来店された時のことを思い出すという話を聞きますね。

A.

記憶と香りってすごく結びついているみたいで。20年ぐらい前に、すごく好きな子がいて。付き合っていたんですけど。その子のシャンプーがビダルサスーンだったんですよ。あの頃おしゃれな女の子はみんなビダルサスーンでしたね。それで別れた後にね〜、すれ違う女の子の香りがビダルサスーンが入ってくると、すごく思い出しちゃって。切なくて。笑

Q.


A.

だから香りと、記憶は紐付けされていて、それで香りと一緒に思い出が入ってくるんですよ。なので、お茶の香りとか、そういうもので重要な記憶を結びつけておけば、いつでもその思い出を呼び出せるわけですね。

Q.

紅茶で自分の記憶のスイッチを
入れられるんですね。

A.

紅茶には、
そういうところがあります。

 

 

( PHAETON 坂矢 )現れる

 

 

Sakaya

それはちょっと
盛り過ぎじゃないですか?

A.

ちょっと・・
盛り過ぎましたね。笑

Sakaya

盛り過ぎましたね。笑

Q.


A.

坂矢さんが来るの
見えちゃったから。笑

Sakaya

あはは!笑

A.

ちょっと
盛ったところがあります。

Q.

いえ、良いお話を
たくさん聞かせていただきました。

Sakaya

これ全部ハッタリですから。

A.

ええ、全部ハッタリです。

一同