APOC PANCAKE PARTY at PHAETON
2017.6/27tue・28wed
ご来場のお客様を見て、非常に幸福度の高いパンケーキパーティだったと感じました。みなさん本当に幸せそうな表情でパンケーキを頬張られていました。今回はゲストのAPOCの大川雅子さんにパンケーキの魅力について、お話ししていただきました。
大川さん、パンケーキに
どんな思い出がありますか?
こどもの頃からホットケーキをよく食べていて、母が焼いてくれるんだけど、いつも焦げるの。母じゃなくて他の人が焼いても、私が焼いても焦げるんだけど、その焦げた部分が「ホットケーキの味」がして、それが美味しかった。
でも、そのうちにテフロンのフライパンが出てきて、パンケーキが焦げなくなってね、成長とともに食べる機会が減っていったんだけど、大人になってすごく食べたくなって。
焼菓子工房SASSER(サッセ)で
パンケーキミックスが生まれたわけ
APOC誕生からさかのぼること12年前の1998年、焼菓子教室SASSER(サッセ)で、もっとお菓子を気軽に作れたらと、あらかじめ粉類を混ぜ合わせておいたら便利かなと思ったのです。
当時はまだ「パンケーキミックス」ではなく、「クイックミックス」というよび方でした。作るものによってバターや砂糖や卵を加えれば、マフィンやクッキー、クイックブレッドが焼ける。その中でも一番気軽なものがパンケーキ。パンケーキばかり焼いていたので、すっかりパンケーキミックスとして定着したのです。
日本人はお菓子をつくることに慣れていないので計量に慎重になりやすいとうか、「きっちり図らないとダメ」のような感覚がありますよね。私が良く行っていたアメリカの家庭ではシュガーや小麦粉の缶がキッチンにならんでいて、パッパッとスプーンで計量して、混ぜ合わせて作っていましたね。
1998年にオープンした
ア・ピース・オブ・ケークの
きっかけ
岡本敏子さんが「どなたか岡本太郎記念館でお店をやってくれる
いい人はいないかしら」とお探しの時に、「いかにもっていうプロでなく、あたり前でない人」という意向があったようでした。
ちょうどその頃カフェ開いてみたいという思いがあり、近くの不動産屋さんをのぞいていたので、たまたま、人から人へと伝われて、近所で教室をやっていた私にお声がかかり、ア・ピース・オブ・ケークを開くことになりました。
※SASSER WEB SITE より引用
1998年4月29日オープン。カフェを開くことはまだいつかの夢と思っていた頃「コーヒーのお菓子」(雄鶏社)で、さっと作れる簡単デザートを「a piece of cake」というタイトルで紹介した事があった。いつかカフェを開いたら、つけようとあたためていたお店の名前。1切れのケーキという他、「簡単簡単」「朝めし前」という意味もある。どちらかというとその方が私には合っている。
何でも気軽にトライしてみる、そしてだれにでも気軽にケーキを食べてもらいたい。そんな思いで始めたカフェ。私の夢が叶ったここは、芸術家岡本太郎が50年近くも暮らしたという自宅兼アトリエ。当初は養女の岡本敏子さんが記念館の館長を勤められていた。カフェがある場所は彫刻のアトリエ跡、太郎さんはここで「太陽の塔」など数々の作品を生み出した。ここには今でも太郎さんのパワーが満ち満ちている。庭に訪れる四季を感じながら、これから先も美味しく豊かでおおらかな空間でありたいと思います。
オーガニック料理のさきがけ
こだわり、きっかけ
30年前に母が亡くなり、そういうこともあって父の食事であったりとか、いろんなことに気を使うようになりました。両親ともに食の意識が高く、その影響で食に対する意識がついたというのはあると思います。
でも、怪しくおいしいものもたくさん知っています。子どもが生まれたり、歳を重ねるごとに、自然と口に入るものは意識するようになっていきました。
Q.
パンケーキミックスを始められた当時は、
オーガニック食品というのは
まだ浸透していないころですよね?
A.
80年代はサブカルチャーというか何かこう「地球を大事に」とか「原発反対」といったイメージの時代だったような気がします。
その頃の私は20代前半で、新しいもの、いいもの、悪いものそういうものをたくさん見た時代でした。
90年代にしょっちゅうアメリカに行きファーマーズマーケットの新鮮で無農薬の野菜や果物は東京育ちの私にはカルチャーショックでしたね。
パンケーキをよく食べていて、さっき話したクイックミックスを思いついたの。その頃はまだ手に入る材料自体が限られていたから、それこそ輸入していないものもたくさんありました。全てオーガニックで揃えられるわけでもなく、その時手に入る一番いい材料で作り続け、配合はその頃から一切変えることなく安心な材料に切り替えながら現在に至ります。
Q.
今目の前にあるパンケーキミックスは、
材料をこれだけの年月吟味してきているわけですから、
もうこれは完成形と言ってもいいのでしょうか。
A.
そうですね、私は「どうしても全てがオーガニック材料じゃないとだめ」という考えではなくって、パンケーキというのは「身近で、楽しく、簡単に」作るものなわけだから。それを使うことによってパンケーキミックスの値段がものすごく高くなっちゃうとしたら、日常のものというよりスペシャルになってしまう。ミックスは全て私が計量から手で作っていて、スタッフと袋詰めをして、パッケージや包装もして、私が「あったらいいな」とずっと思っていた誰が作っても簡単に、美味しくできるパンケーキミックスがでました。みなさんがとても評価してくださって、本当に自慢のパンケーキミックスです。
ワンボールケーキとは?
ボール1つで作れるホームメイドな簡単な焼き菓子を「ワンボールケーキ」と名付けました。a Piece of Cake(朝めし前)の言葉通り、簡単に作れて合理的。
ONE BOWL CAKE
1個のボウルの中で粉、卵、バター、砂糖、牛乳といったおなじみの材料が混ざり合って楽しげな表情を見せる。それがオーヴンの中で、いい香りを漂わせ、おいしい形に生まれ変わる。作り方はいたってシンプル。ちょっとした配合の違い、副材料や焼き型などの工夫によってバリエーションは無限大。さっそく毎日のおやつやデザートに、特別な日やプレゼントにも役立ちます。
※SASSER WEB SITE より引用
今から20年以上前にこのようなお菓子を「ワンボールケーキ」と名付けたいと友人に打ち明けると、駆け出しの私の背中を押してくれて、集英社の編集の方に紹介してくれて、当時担当されていた「nonno」という雑誌の中で「ワンボールケーキ」というタイトルの特集を16ページも組んでくださって、それが今の原点にになっています。
PHAETONでイベントを
してみていただいて
いかがでしたでしょうか?
ほんとうに素晴らしいです。会場に入って、「うわぁ〜」って。こういった形で外で焼くのも初めてだし、素敵なところで、気持ちのよい空の下で、お客様とのふれあいもあって。元生徒さんやお知り合いの方も駆けつけてくださいました。
いつもと環境も全然違う中で、限られた材料ですから、何倍も考えながらやるのは大変でしたけれど、楽しかったです。
このパンケーキというのはひとりでは作れないんですよね。焼くのは私ひとりですが、PHAETONのスタッフがサーブして、初めてお客様のテーブルにお届けできます。それはAPOCでも同じです。
パンケーキミックスは配合するのは私一人しかできませんが、何種類かの材料のうち、海外のオーガニック材料が主要材料なのでたくさんの人の手によってつくられた材料をひとつひとつ選び材料をミックスして、計って、袋につめて、パッケージを作って、梱包して。
いろんな人が関わり合って一つのパンケーキが食べられるんですよね。
初めてお目にかかるスタッフの方もいらしたPHAETONのみなさんとの2日間は、とても良い関係でした。よく働きますね、みなさん。お世話になり、助けていただきありがとうございました。
素朴な質問ですが、
パンケーキとホットケーキに
違いはあるんでしょうか?
日本で浸透するときに、温かいケーキだから「ホット」なケーキということでホットケーキという名称がつけられたようですが、温かいケーキを焼くという意味では同じなんじゃないかな、と思います。
パンケーキはフライパンで焼くからパンケーキと言われていますが、国や土地によっても呼び名が違うので、日本では「ホットケーキ」として浸透した、ということかなと思います。
Dee’s、F.O.B COOPの記憶
初代スタッフ・メニュー開発について
当時はボスたちが30代、私が20代。ショップインカフェなんていうのはまだ本当になくて先駆けでしたね。
若い私にチャンスをくれて、怒られながら仕事を覚えて。あの頃に関わった方達は、みんな人生の師匠です。
Q.
その当時メニュー開発されていたものが、閉店されるまでずっと変わらず提供されていたそうですね。
そう、メニューもずっと変わらず、私が手書きでかいたメニューボードも数年前の改装が入るまでずっとありました。でも、そのDee’sもF.O.B COOPにも実際は数ヶ月しかいなかったの。
数ヶ月というのは今となっては一瞬の出来事のように見えますが、その影響力は本当に大きいですね。
3日も3ヶ月も30年も関係なくて、どれだけ長く一緒にやってきたかじゃなくて、その中身とその後でしょうか。ですから、今もその頃の方々と交流があるのは、本当に良い時間を過ごせたということなんだと思います。
APOC 大川雅子|MASAKO OKAWA
1980年半ば、ショップインカフェとして先駆け的な存在であった、「DEE’S(現DEE’S HALL)」、広尾「F.O.B COOP」、田園調布「DEPOT39」等、複数のカフェでメニュー開発や料理、デザートを担当する。ボール1つで作れるホームメイドな簡単な焼き菓子を得意とし、「ワンボールケーキ」というネーミングをつける。1991年に出版した、『ケーキ工房のお菓子』(文化出版局)は焼き菓子ファンを増やし、お菓子作りの楽しさを伝える本として再販を重ねた。南青山にて教室『焼菓子工房SASSER』主宰。