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PHAETON BOOK #5  |  2019 AW

toogood
Faye and Erica Toogood
Interview

 

 

 

プリンシプルがはっきりとした
toogood 姉妹の思想が、
時代を変えると信じて疑わない。

坂矢 悠詞人

 

 

 

 

Q ユニセックス


性別に関係のないシルエットが魅力ですが、そこに制服的な信頼感があるように感じます。男性も女性も共に着られるということについて、意識しているところはどんなところでしょうか?

 

 

Erica Toogood


“ユニセックス”ということではないんです。私たち、友人たち、そして6ヶ月サイクルの終わりのないファッション・システムにのみ込まれたくないと意識している人たちのためのユニフォームなんです。Fayeと私はウィメンズのお店だけではなく、よくメンズの店舗でも買い物をしていて、そこでは常に他には無いフィット感、そして形容し難い着心地を持つ丈夫な服をいつも探していました。

ユニセックスは歴史的には雌雄両性(女性らしさの排除やわざと男性的な部分を無くすという、そのどちらかの意味において)を暗に示してきました。つまり性別をわざとぼかそうとしたり、実際の性差に関わらず皆が同じように見えるということです。ですが、ここでは装うその人自体が最も大事になってきます。装うあなた自身がどう着るかを決めるのであって、またあなた自身がユニセックスというものを定義する線を引くのです。女性はとことんフェミニンでいられるし、男性は非常に男性らしくいられるし、逆もまた然りです。完全に装うその人自身に委ねられているのです。性差を超えることを目的とするだけでなく、年代や世代もかなり深く関連してきます。28歳の男性が75歳の女性と同じハンドペイントのコートを着るというのは全く異なる行為です。

 

Q 変える必要がないもの


まるで英国の伝統のごとく、変える必要のないデザインは、維持されるように毎シーズンほぼ同じパターンから様々なディティールの異なるコレクションが発表されますが、その揺るぎないデザインの根本はどこから来ているのでしょうか?

 

Erica Toogood


私たちの初期コレクションのデザインは今でも最新のコレクションに登場します。例えばフォトグラファー・ジャケット、アクロバット・トラウザー、オイルリガー・コート。これは自分たちのデザインが長い時間の流れに耐えうるか、そしてそれが今でも新しく感じられるかという部分をテストしていることに他なりません。それが私たちがパターンをアーカイブしていくことの大きな目的です。半年毎に何もかも新しくしてしまうのではなく、私たちはこれまで積み上げてきたものをとても大事にしています。洋服に対して、家具と同じようなアプローチをしていきたいと思っているし、そうすることプローチをしていきたいと思っているし、そうすることで使い捨てでなく長い間使ってもらえるものになると信じています。

 

Q Tinker/Tailor


Fayeさんがコンセプトを考えるTinkerでありEricaさんが仕立てるTailorとのことですが、FayeさんのクリエイティブにEricaさんが参加したりTailorの部分にFayeさんがアイデアを出すことはありますか?

 

Faye Toogood


重要なのは、私たちはそれぞれ異なる関心や技術を持っているということです。ですが私たちは同じ場所で生まれ育ち、同じ哲学を共有しています。Ericaの専門はパターンカッターで、線から立体を生み出し、シェイプやフォームを作り上げることができます。姉妹で働くということは、互いに対してとても正直であるということに他ならないし、2人の間にあるクリエイティブな力がうまく作用します。ほとんどペアのダンサーのようで、そこに言葉は要りません。

 

 

Erica Toogood


私たちはお互いに説明を必要としていません、ただ感じるだけです。Fayeはいつも十歩先を見て次のアイデアやコンセプトを考えています。Fayeはひとつのプロジェクトを大きな部分から俯瞰して捉え、先にある結論からそれぞれのプロセスに逆算し、のように進めれば求めている結果にたどり着けるかということを見通す能力に非常に長けていて、私は常々その慧眼に驚かされます。ほんの些細な過程から、大枠の動き方まで、彼女はすべての点を考慮しているのです。

私は度々言うのですが、建築家やプロダクト・デザイナーに自分が考えているコートを着せてみると、とても面白い反応が得られます。Fayeはさらにファッションデザインを学んだ人間とは全く異なる視点と方法で、縫製やディテール、シルエットなどについての質問をしてきます。Fayeは洋服に対してとても直感的な人間です。彼女は気にいると、トワル・サンプルを脱ぎません、そしてそれは必ずコレクションに入ります。

告白すると、私は規則や制約のあるところを非常に好みます。そこにある種の安全さを感じるし、それでいてスタジオではそこに誰かの判断を気にすることなく挑戦する自由を与えられています。Fayeと私がブランドを始めた時、彼女は一旦既存の仕組みを取り払って、全く新しい視点でルール作りを進めました。その中で、私はいわゆる一般的なパターン・カッティングのブロックを使わずに、束縛されることなく自由にフリーハンドでドレープや平面のデザインをすることが出来ました。私は常にパターンカットの制約(決められたルール)を尊重していて、いまだにごく稀ですがそこに戻ることさえあります。ですが、やはり自分のやり方により明確な利点を見出しています。

全てはFayeのコンセプトから始まります。それらはしばしば彼女自身の自叙伝であったりパーソナルなテーマだったりします。出発点は絵画の中に見る形や色目だったり、ある物だったりします。私の専門がパターンカッティングなので、私は技術的な面での立ち位置から、チーム全体で新たなシルエットや素材、私たちの視点を具現化していくことに挑戦しています。

 

 

 

Q 素 材


シーズンごとに定番のコレクションの素材やディテールを変えて全く違う表情を見せていますが、その素材の着眼点というのはどこから来ているのでしょうか?

Erica Toogood


シーズンごとの素材のセレクションは、デザインを始めるあたりFayeが作るコレクションのコンセプトによって大きく左右されます。彼女はイメージなどからコンセプトを発展させ、時には彼女が集めるオブジェクトから発展することもあります。このコンセプトは素材だけでなく、形や色目のセレクションにも反映されます。この過程において、最も難しいのは素材の選択をある程度制限し、コレクションを削ぎ落とす必要があるということです。

Faye Toogood


シーズンを超えて維持するスタイルもあるので、イギリス製のカシミアコート素材や、ワックスコットンなど、特に好きな素材においても、また同じく何年にもまたがって使用していくものがあります。

 

 

Q ファッションと空間


ここまで服作りと空間作りを完全に表現しているブランドは例を見ないと思いますが、toogood側から取扱い店の空間に対して「こうあってほしい」と求めることはあるでしょうか?

 

 

 

:洋服について

Erica Toogood


私たちは全てのクライアントに感謝していて、それぞれのお店が様々な方法でスタイリングをし、私たちの洋服を組み合わせるのを見ることを楽しんでいます。私たちのブランドタグ(これはパスポートと呼んでいます)には使用者が自分のイニシャルを書き込むスペースがあります。私たちはtoogoodの洋服を着用する人が、私たちの洋服サイクルの一部となることを信じています。デザインすることから、生産を通じて、着る人に渡していくようなサイクルという意味です。私たちはtoogoodの製品がお客様の人生に寄り添うものとして、シーズンのトレンドに左右されずに長い間、使用してもらえるようになることを望んでいます。

 

:インテリアデザインについて

Faye Toogood


考慮する上で最も重要なのは、その空間を使用し、住む人です。ですので、私自身が仕事を始める前に、オーナーとクライアントの関係や繋がりが作られている必要があります。それがあって初めて、私が内装を通して、彼らの興味や情熱を表現していくことが出来ます。私にとってインテリアデザインとは既存のスタイルを切って貼り付けるようなものではないです。それはむしろデザイナーとしての私と、そこに住むことになる人とのコラボレーションです。彼らがそこに存在することを前提とした場所を生み出す必要があると考えています。

 

 

Q 日本について


日本についてどう思いますか? 文化でも、ファッションシーンについてでもよいのですが。

Faye Toogood


デザインやディテールに対しての注意力:つまり箸入れの紙にプリントされたグラフィックから、木こりの方々が着る素晴らしいユニフォーム、大規模の建築プロジェクトまで。それら全てに厳密で、かつ洗練されたディテールへ込められた意志を感じます。つまりクラフトへの情熱です。日本の方々は他のどの文化よりもクラフトマンシップに対しての深い理解と感謝を持っています。皆さんは出自を問わず、日本のものも他から来たものも等しく愛しています。私達の最も審美眼のあるクライントは日本の方々です。そして彼らは本当に私達が提供しようとしているものや美しくデザインしようとしているものを理解しています。

 

 

 

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