ポータークラシックがつくる、
世界基準のスタンダードを影で支える
お針子マフィアを追う。
PHAETON
Porter Classic にとってお針子さんとはどんな存在でしょうか。
Nakajima san
すごく難しい質問だとは思うんですが、PCのカスタムというのが創業当初からありまして、それがずっと最初から克さんがお客様の洋服をよりオリジナルなもの、より大切にして愛着が湧くようにしてあげたいっていうのが、PCを立ち上げたときに、お針子さんを取ろうっていう思いがあったと思うので、そうですね、いろんなアパレルの会社で販売している人がいたり、パターンを引く人がいたりっていうのが普通だと思うんですが、それと一緒でお針子がいるっていうのが普通のことで、特別なことではなくて。そういうことなのかなって思います。
P
中島さんは初めからお針子さんとして呼ばれたのでしょうか?
N
私より先にPorter Classicに知人がいて克さんと知り合っておりまして、特に何も聞かされないまま「手仕事ができる人がほしい」って言われて、来てくれないか?と。それで「あ、行く行く!」って笑。
P
普通にアルバイトに呼ばれたくらいの感じで?
N
そうですね笑。それでその時はじめて克さんとレオさんにお会いして、克さんにお会いした時に、「ここにある生地で人形を作ってみて」と言われまして、人形なんて作ったことないなあと思いながら、モヒカンの(中指を立てている)クマのぬいぐるみを作って笑。
それを作ったら、巾着を作ってみてとか。それが一般社会でいう履歴書だったり、面接だったのか?というとまた難しいところですが、気付いたらはや10年を過ぎていたという。
P
すごいですね。年間いったい何万針通されているんでしょうね。毎年かなりの数のハンドワークのアイテムを作られていますが、これだけの数をいったい誰が作っているのだろうと思っていましたが、お針子さんのメンバーの人数は特に変わらずといったご様子で。
N
そうですね、ほぼほぼ変わらずです。あとは外から少し手を借りる感じで少しずつ裾野が広がっているかな、という感じです。
P
しかしながら、(HOBOのカスタムパーツを見て)こういったものは、中島さんでないとできない部分もあるわけですよね。
N
そうですね、私も最初がそういうスタートだったので、みんなやったら出来ますよ、っていう感じでもあるんですけど。それでもやっぱりそれぞれお針子がいて、どれを誰が縫ったのか、作業する姿を見ていなくても見たらわかりますし、そういう個性を、それぞれお客さんが受け入れてくださっている現状がすごくありがたいなと思います。
P
なるほど、それでは大ファンの人なら見れば誰がやったのかわかるかもしれませんね。
N
わかると思いますね〜。
ちょっと話はずれますが、Porter Classicでシャツを作って、特に今はロールアップシャツが人気ですけれども、やっぱりお客様で気づかれる方は普通のシャツとの仕立ての違いに気づかれる方もいらっしゃいますね。
P
そこまでいくともう本職レベルの見立てですね。
そして、この魅力的な絵柄たちなんですけれども、モチーフなどもあるかとは思いますが、デザインなどへの情熱というのはどこから来るんでしょうか?仕上がった作品を見ると、お針子さんたちも楽しんで作られているんだろうな、というのが伝わって来ます。
N
やっぱり、お客さんもそうですけど、私たちには克さんという偉大な存在がいて、やっぱり克さんに「すごいの作ったね!」って言わせたいですし、そうでなきゃいけないっていうのが、みんな頭のどこかにあって。それが一番ですね。
やっぱり日常から克さんとレオさんとお話ししている中で、デザインのヒントなども無限にあるので、逆にまだ全然形にできていないものがすごくいっぱいあります。笑
P
まだほんの一部なんですね。笑
N
そうなんです。笑
だからまだまだ尽きないですね。欲求は。
あれもやりたいしこれもやりたいし。まだまだって感じですね。
P
まだまだお客様にとっても楽しみがあるということですね。
N
そうですね、そうとってもらえたらと思います。
P
先の質問と少し重なる部分もあるかもしれないのですが、
お針子さんの作業としての醍醐味というか、ここが楽しい!というところはあるでしょうか。
N
やっぱり頭の中である程度想像して、組み立ててやるんですけど、やってみるのと思っていたのとでは実際はちがうなっていうことがあって。それはどんな職業でもきっとそうなんでしょうけれども、それが、こう頭をからっぽにして手に任せて作業をしていると、思ってもみないところが繋がってくるので・・
P
計算外のところで発見があるわけですね。
N
そうですね。そういう面白みというのはすごくありますね。お針子と言いますけど、Porter Classicファミリーといった感じで。ショップの人たちや克さんレオさんと話していると、作っているものが作業からステップアップすると言いますか。物を通して「そうだよね!」「ここだよね!」ってお互いが通じあったりすることはありますね。
P
ある日突然進化するというか、みなさんの点と点がコミュニケーションの中で繋がる感じですね。
N
そうですね。ものづくりのことに関しては毎日話していますし、でもやりたいことがあっても、それがうまくいかないこともありますし、それがまあ、置き去りにするわけではないですけど、一旦置いといてってことってあるじゃないですか。それが何か別の作業をしていたり他の人と話しをしている時に、また進化して新たなものが出来ていくっていうのはやっぱりすごく心が躍りますね。
P
毎シーズン「こんな表現方法があったのか!」と、いい意味で期待を裏切ってワクワクさせてくれるのは、このPorter Classicファミリーのやりとりや毎日の発見の繰り返しがあるからなんですね。そこでまた「お針子マフィア」という名前からして、一体どんな人たちがこれを作っているんだろうと皆さん思っているわけですけれども。
N
「お針子マフィア」という言葉が、もしかしたら一人歩きしているのかもしれないのですが、「チームポータークラシック」でものづくりをしているっていう感じはありますね。私たちは手を動かしているけど、結果的に全員でものづくりをしているんだな、というのは常日頃すごく感じます。
P
イベントでお客様の前でハンドワークの実演をされることも多いかと思いますが、アトリエで作っている時のモチベーションと、お客様を目の前にして直接声を聞きながら作るというのは、やっぱり違うものでしょうか。時にはインスピレーションを受けることなどもありますか?
N
やっぱり全然違いますね。せっかくご購入していただいて、その場で針を入れさせていただくということで、失敗も許されないですし笑。独特の緊張感とともに。普通のものづくりって自分で作っていても実際それを購入されたお客様にお会いできることっていうのはなかなかないことだと思うんです。
P
そうですよね。
N
それでお客さんと触れ合えるというのはありがたいなと思いますし、お会いすることによってお客様の好みであったり、「きっとこういうものが好きなんじゃないか」っていう傾向を知るというか、蓄積していける喜びがありますね。今度来てくださった時に、こういうことが提案できるんじゃないかなとか。
P
そういう好みや傾向の蓄積が、より「Porter Classicらしい」という表現になっていくのかもしれませんね。
N
あと、すごく個人的な意見ですけれども、克さんがカスタムをしたいっていうのは、自分で古着を修理をして着ていたりですとか、誰かが誰かのためにやってくれた修理だったり、ポイントだったり、そういうものにすごい暖かみとか思いやりを感じるんですよね。克さんのお話を聞いていると。なので個人的にはすごい勝手に、緊張もしているんですけど、いらっしゃってるお客様の「母になっている」ような気持ちで笑。
N / P
あはは!笑
N
そういう気持ちになっていることが多いですね。笑
P
インスピレーションというよりは、「思いやり」の感情が強い感じですね。
N
そうですね、でもインスピレーションも、私たちとは全然違う暮らしをしているお客様なので、思ってもみない視点ですとかこういう組み合わせがあるんだなというのは勉強になりますね。どんな小さい子でも、男性でも女性でも全員に通じますけど、その人の個性と、どういう状態で生活しているかもすごく現れるので。その「こういう風にしたい」っていう会話の中で。なのですごく勉強になりますね。
P
イベントならではの発見もあるわけですね。
P
満を持して発表された刺し子のシリーズですけれども、今まで手作業でしか作れなかったものが工業化されたことというのは大きな意味があると思います。その部分で、お針子さんの立場として感じるところはあるでしょうか。
N
刺し子について、克さんが感銘を受けたのは東北の刺し子の展示を見てからのことですが、今より全然物量がない時代に、いわゆるその当時には口べらしがあるような時代背景で、東北の寒さを防ぐ手立てがないから減らすといった、そういう暮らしの凄さがあったということにすごく感銘を受けていていて。PCはメイドインジャパンをすごく大事にしているんですけれども、その文化も大事にしたいなっていうことだと思うので。洋服を作っている上で、歴史とか文化とか、買う人はそんなに意識しないと思うんですけど、作る私たちはそれを大事にしたいと思うし、本当だったら手で刺すのが一番だとは思うんですけれども、レオさんが「適度な価格でより多くの人に手に渡るように、でも手刺しの雰囲気は壊さず生地を復刻することで、色んな方に刺し子という文化を知っていただこう」ということで、生地が出来まして。やっぱりこの生地ができなかったら刺し子のことを知らないという人が沢山いると思うので、歴史を知るひとつの手立てになったりしてくれる存在になったら嬉しいなと思いますね。
P
実際にこの刺し子のシリーズによって、「刺し子」というワードが浸透していっている、という実感はありますよね。普段は見慣れないこの「刺し子」という単語を日常の中で使う機会ができたというのは大きいと思います。
N
それは嬉しいですね。Porter Classicのものづくりは、歴史や文化は大事なワードになってくるので、生地作りもやっぱりそうなんだなと思いますね。
P
もともとボロの生地をつないでジャケットなども作っていらっしゃいますが、そういう意味では刺し子自体はずっと作業としてはやってこられたわけですよね。
N
そうですね、あのいわゆるボロと言われたり襤褸(らんる)と言われたり刺し子と言われたり、色んな呼び名がある生地ですけれど、そういう歴史を知ったりすると、ボロとは決して呼べないわけです。克さんは絶対にボロとも襤褸とも呼ばないです。そのくらい尊敬して、畏れをもってあの生地を見ています。それらに手を加えるというのは、心の持ちかたが難しいというのはあるんですけれども、そういう創作をされている人たちが沢山いる中で吉田克幸がこれをやるっていうのが、すごく意味のあることなのかなと思いましたね。そう言った古生地を使ったものづくりというのは。
P
実際お針子さんが全て手刺しで作ったアイテムというものもありますよね。
N
そうですね。刺し子LOVEの時に数点出たと思いますが、そういうことは忘れないでというか、手で刺したもの、工業化されたもの、両方やりたいという気持ちは常に持っておりますね。
P
ありがとうございました。
これからも楽しみにしております!
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