Isabella Stefanelli

 

 

 

PHAETON BOOK #5  |  2019 AW

Isabella Stefanelli
Interview

 

 

 

露出を拒み、
その存在がベールに包まれているイザベラ。
これは、実在する奇跡。
彼女の手は、真実である。

坂矢悠詞人

 

 

Q ブランドを始めたきっかけ


これまで様々なデザイナーやアーティストとの仕事を通じて輝かしいキャリアを築いてきたと聞きました。それを経て、ご自身の名義でのもの作りを始めるきっかけとなった何かがあるのでしょうか?

 

Isabella Stefanelli


テーラリング、商品開発、パターン、デザインといった角度から長年商品づくりに関わる中で、自分の技術を磨くために時間を費やしてきて、独り立ちしてもいいのだと思う瞬間がやってきた。デザイナーになりたいとか、有名になりたいと思ったことはなかった。けれど気がつけば、物を作ることが、自分という人間の精神にとって、必要なことになっていたのだと思う。

 

Q ルーツとしてのイタリア、父親(母親)の影響


テーラーの家に生まれ、幼い頃より父親のもの作りに触れてきたと聞きました。イタリアンテーラーの職人の娘として、幼少期の原風景がもの作りに与える影響を感じますか?

 

 

Isabella Stefanelli


イタリアで育ったことも、父親のことも、すべて文字通り、私のルーツ。私の作る物は、すべて、テーラリングの技術を踏襲していたり、インスピレーションを受けたりしているものばかり。ディテールへのアテンションなど、そこで学んだことが、私の体の中に生きていて、それを商品に活かそうとしている。父親のテーラーショップで耳にしたハサミの音を今でもはっきり覚えているし、逆に針やハサミを使い始める前のことはほとんど覚えていないくらい、常に父の手伝いをしていた。テーブルに背が届かない5歳くらいの頃から、人形で遊ぶ代わりに、糸を針に刺したり、縫製をしたり、アイロンをかけたりしていた。シンプルなことばかりだったけれど、父は仕事にとても厳しかったし、技術が完璧になるよう、ひとつひとつのタスクを何度も繰り返すことを続けた。

それでも、一度は、自分のルーツを離れて、父と反対の方向に進んだと思う。通常のテーラリングでジャケットを作ることは私にとっては簡単なことだけれど、結局違う物を作っている。その代わり、ディテールに父から学んだことが生きている。父がクラシック音楽だったとしたら、私はジャズだといえばいいかしら。父は私が独立する前に亡くなったけれど、私がハサミを持つことに誇りを持ってくれていたし、父のハサミを受け継ぐことができたのは、私にとっても大きな誇りなの。

母親は、医療用のコルセットを作る仕事をしていた。パターンを使わずに、患者さんたちの体に合わせて作る仕事を。そこから人の体について学んだと思う。

 

Q 圧倒的な作り込みへの情熱


細部にまで妥協のないもの作り。まるで効率を度外視したディテールの積み上げ。狂気さえ感じるほどのこだわりが散りばめられた作品たち。その作品が持つ力が、洋服に携わる仕事を持つ人だけでなく、なんの予備知識もなくその日に初めてあなたの洋服に触れる人をも瞬時に魅了している瞬間を何度も目の当たりにしています。あなたを突き動かす情熱と原動力はどこにあるのでしょうか。

 

Isabella Stefanelli


むしろ自分が生きていくために必要なこと。ひとつひとつの工程に、自分の強さが試されるし、苦しい作業もある。けれど、私にとっては、自分がやっているすべてのことを体全体で感じる必要がある。自分が作る物は自分にとっては子供のような存在だけれど、子供を育てるって、とても大変なこと。それと同じだと思ってる。

 

 

 

Q 作品に捧げられた偉人やアーティストたち


それぞれの作品に、ある特定の人物がフィーチャーされています。なぜその人たちが選ばれているのか?またそれによって伝えたい意図はなんですか?

 

 

Isabella Stefanelli


父が画家でもあったし、アートの本や作品に囲まれて育った。いつも周りに表現者たちがいた。そして、過去の表現者たちの人生について読んだり学んだりすることが、自分の精神の助けになってきた。恐怖心を持たずに自分という存在を受け止めることに。人間が表現者になるためには、育まれる必要があると思うの。だから彼女たちの人生、苦しみを知り、彼女たちがどうやって表現者になったか、世間のルールではなくて、自分のルールをどうやって作ったのかといういことを知ることが自分にとっては大切なことだったし、私の服を手に取る人たちにも、彼女たちのストーリーを知ることで、自分という存在を受け止める助けにしてほしいという気持ちもある。自分が彼女たちのストーリーを知って、自分と重ね合わせたことに助けられたから、それをおすそわけしたい。あのタグをつけるということは、私にとってはとてもパーソナルな作業であると同時に、私からのギフトでもある。

 

Q 鞄について


最初のコレクションはラゲッジだけだったと聞きました。あなたにとってそこには何か特別な意味があるのでしょうか?

 

 

Isabella Stefanelli


とても長い間、洋服を作ることに関わってきて、独り立ちするときには、うんざりしていた。とにかく洋服から一度離れたかったの。だから何かを入れることのできる容器とか、アクセサリーのような物を作りたいと思った。レザーという素材がとにかく好きで、染めたり、縫ったりといった作業、発する匂い、縫製するときに力が必要だということ、すべてに魅力を感じていた。新しいチャレンジを求めていたこともある。レザーの商品を持って展示会に行くときに、着るものがないと思って、シャツとジャケットとパンツを作って着ていったら「デザイナーは誰なの?」と聞かれて、欲しいと声をかけてもらえるようになった。洋服を作る予定はまったくなかったの。結果的に有機的なめぐりあわせによって洋服を作ることになったことには、今は満足している。

 

Q 素材


素材開発に並々ならぬ情熱を持って取り組んでいると聞いていますし、またそれを作品から感じます。あなたにとって素材が持つ力とはなんでしょうか?

Isabella Stefanelli


すべては糸から始まる。糸を生地に編み込む作業は絵を描く作業に似ている。フレームから始まって、最初の一筆から少しずつ重ねて作品を作っていくという作業に。糸から始まって、それを編み込みながら、その作業に没頭していくことで、最終的には一枚の衣類ができあがる。子供の頃、父と一緒に油絵を描いていた。テキスタイルを編むことが、自分にとっては油絵を描くような作業になった。テキスタイルを作るということは、自分が生きてくために、必要なことなの。カウンセリングみたいな存在で、時間をかけることで、世の中の速度と、違う速度で作業をすることができる。手を動かすことでしかできないから、急ぐことができない分、その世界に没頭することができる。私たちは、コンピュータと情報過多の時代に生きていて、そのおかげで自分の頭脳が加速しすぎてしまうことがある。生きるための術。

 

Q 日本について


日本についてどう思いますか? 文化でも、ファッションシーンについてでもよいのですが。

 

Isabella Stefanelli


子供の頃から、日本人の友達がいて、床に寝たがって母親に怒られたくらい、日本の文化に魅力を感じてきた。土や自然とのコネクション、物やディテールを大切にすること、伝統や精神をリスペクトすること…私にとってこうしたことが日本文化の象徴だと感じているし、物を作り始めてから、日本の人たちは、いつも私のストーリーに耳を傾けてくれてきた。

 

メッセージ


ファンの皆様へ一言メッセージをお願いいたします。

 

Isabella Stefanelli


テーラリングも、ハンドメイドも、手を使ってやるから、とても長い時間がかかる。私のように小さなブランドにとって、商品の量を増やさずに、この大きな世界の市場でやっていくのは大きなチャレンジだし、葛藤でもある。同時に、物質過多の時代には、私のやり方は、ある意味、新しい方法だと思う。感情的なコネクションを持つことのできない物をたくさん買うのではなく、丁寧に作られた物を少しだけ買って、大切にケアしながら、長い間使うことを考えてほしい。

 

Interview_Yumiko Sakuma

佐久間裕美子(さくまゆみこ)|著作が刊行されるたびにPhaeton/Letoを訪れてトークイベントを行う。
ニューヨーク在住ライター。著書に「ヒップな生活革命」(朝日出版社)、「真面目にマリファナの話をしよう」(文藝春秋)。

 

 

 

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