『夏の終わり』
このフレーズからだけでも呼び起こされる、寂しさ、もの哀しさ。
終わっていくという感覚を、切なくも美しいと感じる心というものは、日本人独自の感性のようです。
日に日に涼しくなり、過ごしやすくなっていく。心地よくなっていくはずなのに、なぜか切ない。
それは、ひょっとすると香りの仕業なのかもしれません。
そもそも、香りの香り方、感じ方というのは、温度、湿度、気流と大きく関係してきます。
まず温度。
温度が高くなると香り分子の揮発性(液体から気体になる性質)が高くなり、より香りを感じやすくなります。出来立ての温かい料理から漂ってくるいい香りが、冷めると感じにくくなるのはこのためです。
次に湿度。
空気中に水蒸気が多いと、香り分子は留まりやすくなります。
雨の日に、不快な香りを感じやすくなるのもこのためです。
そして気流。
空気の動きも、当然関係してきます。
晴れている日は上昇気流があるため、香りは上に運ばれ、上昇気流がない曇りの日は、地上付近に溜まりやすくなるのです。
梅雨、そして高温多湿の日本の夏を体感してきた私たちは、きっと多くの香りを感じて生活してきたのでしょう。
その香りが、夏の終わりとともに、少しずつなくなっていく。。。
気づかないうち失われていく香りたちから、知らず知らずのうちに寂しさを感じているのかもしれません。
香水の香り方も同様に、夏は特に強く感じやすくなるもの。
また、香水については、肌の温度、水分や皮脂の量、肌に含まれる成分によっても揮発性が異なるため、体温が高くなりやすく汗をかきやすい夏場は、香り立ちが変わってくるものです。
NOSE NOTESをご覧いただいている香り好きの皆様は、このことに自然と気づき、夏の香りを愉しんだことでしょう。
そして、秋の香りはどうしようと模索しているのではないでしょうか?
暑い日が続くけど、季節を先取りした重めの香りを嗜むのもよし、秋の装いに軽めの香りを嗜むのもよし。
気温によって、香水を付ける位置や量を調節するなど、少し意識してみるのも良いのかもしれません。
その分、香水という目には見えないアイテムは、自由に愉しむことができるのです。
自分自身の心地よい香り、気分が晴れやかになる香りを纏う。
自分軸で香りと向き合うこと、また季節によっての変化を愉しむこと。
季節の変わり目は、心も身体も変化に敏感になる時だからこそ
自然の香りはもちろん、自分自身の香りも変化を味わう。
四季がある日本ならではの香りの嗜み方です。
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