リラックスや安眠を促すために、部屋の中でアロマを香らせる。
寝香水として香りを纏う。
香り好きの、アナタならもうすでに実践していることなのかもしれません。
嗅覚は五感の中で最も人間の本能的な感覚だからこそ、「香り」が心や体に働きかける効果は絶大です。
今では、医療的にも研究が進んでいて多くの作用が実証されていますが、まだまだ謎に包まれている神秘的な力が「香り」にはあります。
今回は、そんな香りの力と眠りについてのお話。
その昔、中世ヨーロッパには、いろんな魔物が出没しました。
その一つが夢魔(ナイトメア)です。
夢魔は夜、寝室に現れ、人々を揺すったり、押さえつけたり、恐ろしい言葉を投げかけて眠る人々を苦しめました。
そんな夢魔の侵入を防ぐため人々は、香りの良い草や葉、枝、花を入り口や窓のところに掛けてみることに。すると不思議なことに夢魔は現れなくなり、快い眠りにつくことができたのです。
当時の人々はこれらの植物の香りを、夢魔が嫌がったのだと考えたようです。しかし、現代の知見で考えると、寝室に漂う芳しい香りが、眠る人々に作用し人々の悩みを和らげ深い眠りに誘ったと考えたほうが妥当でしょう。
そのまた昔、古代エジプトの人々は、すでにそのような香りの神秘的な力を感じ取っており、儀式の際にに香りを焚くなど多くの場面で、香りを用いていました。
そんな彼らが、安眠に用いた香料がキフィ(聖なる煙の意味)です。
キフィはひとつの香料ではなく、いくつかの香料を組み合わせたものでした。古代のレシピはいくつか見つかっているようですが代表的なものとしては、
ショウブ、シナモン、ペパーミント、没薬、レモングラス、アカシア、レーズン、ヘンナ、ジュニパー、ピスタチオ、カシア桂皮、松脂、カシア、オレンジ、バラ、蜂蜜、ワインなどが使用されています。
これらの香りは、眠りを誘い、悩みを和らげ、夢を快くすると言われ、いずれも夜を心地よくするのが特徴で、夜間に著しく効果が現れるというものでした。
実際に香料を再現してみると、現代のオリエンタルノートに近いようです。
キフィに入っている香りはもちろんのこと、ラベンダーやサンダルウッド、ベルガモットなど、安眠に誘うと言われる香りは数多くあります。
もちろん、それらの香りに頼ることも時には必要なのかもしれません。
でも、まず第一に自分が好きな香り、心地よく感じる香りを選んでみてください。
嗅覚は人間の最も本能的な感覚、また睡眠は最も自分自身を休める時間だからこそ、より自分自身の直感を大切にしてほしいのです。
ストレスや、スマホなど、現代にも『夢魔』とも呼ぶべき私たちの眠りを妨げるものは多くあります。
そして秋の夜長は、本能的に睡眠が長くなる季節。
ぜひ香りを味方に、良質な眠りの時間をおすごしください。
参考資料
・香りの百科事典 丸善株式会社 谷田貝光克・編
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